オオカミ王子はわたし限定
声のトーンと、見なくてもわかるきみのオーラがすこし切なげにゆらめいた気がして反射的に顔を上げた。
視界に映ったりっくんは、そんな切なげなオーラでも、さっきまでの危険なオオカミオーラでもなく、いつも通りの王子様なキラキラオーラを放っていた。
「……とか言って。勉強、しようか?」と、顔を上げた私と目を合わせながら小さく笑ったりっくんは完全にいつも通りの彼に戻っていた。
さっきまで確実にいた、いつもより声のトーンが低くてオオカミみたいなりっくんはもういなかった。
流すように笑ったから、少しそれにもやっとしたけど、いつものりっくんに戻ったから安心もあって。
わからないんだもん、昨日のりっくんも、さっきのりっくんも。
どう接したらいいのかわからない。男の子とよく話すほうでもないから、どうするのが正解なのか、全然わからないの。
私の推しは"王子"なりっくんで、人当たりが良くて、人気者なりっくん。いつも幸せをくれるりっくん。そうじゃないりっくんは、わからなくて、ドキドキして、早く離れてほしいって、名前なんて呼ばないでほしいって思う。