病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

17、ブロムベルク辺境伯領

「まあまあ! お嬢様! すっかりお綺麗になって!」

 ブロムベルク辺境領の領都リーデンの、辺境伯の城でわたしを出迎えてくれたのは、懐かしい乳母のヒルダだった。
 飛行船の中から辺境伯家の城に通信を送り、わたしと次期辺境伯であるユードの滞在を知らせておいたのだ。
 
 ユードは有能だった。
 父からわたしの書き置きとディートリンデ様の手紙を見せられ、即座に追いかけることを決意。父から辺境領視察の命をもぎ取り、正式に辺境領に滞在する許可を得、まっすぐに空港に転移する。離陸直前の飛行船に強引に滑り込み、わたしを確保した。

「どのみち、辺境伯は帝都の屋敷と辺境の城とを、半々で往復することになります。結婚直後に新婚旅行(ハネムーン)を兼ねてしばらく滞在するのは不自然じゃないからと、了承していただきました」
 
 ユードは父の伝言を持ってきていた。

『ディートリンデ嬢がまともでないのは了解した。しばらく帝都を離れ、二人で夫婦として向き合ってくるように』

 ヨルクが懸念したように、父もディートリンデ嬢がわたしに危害を加える可能性に思い至り、帝都を離れさせることにしたらしい。  
  
 そんなわけで、わたしは六年ぶりに帰郷し、乳母と抱きしめ合って再会を喜んだ。
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