病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

2、セシリアの前世

 地震で絶体絶命のところを救われる。
 こんな劇的な再会を果たして、わたしの恋心が再燃しないはずはない。
 そしてユードもまた、わたしの命を救った褒賞として、わたしの護衛に戻りたいとお父さまに申し出た。

「身分違いは承知しております。俺は以前から、お嬢様に恋焦がれておりました。命を懸けてもお守りいたします」

 青い瞳を情熱に滾らせてわたしへの想いを語るユードに、わたしは夢を見ているような気分だった。
 ユードが以前から、わたしのことを愛してくれていたなんて、嘘みたい!

 ――実際、嘘だったのだけど。

 わたしと結婚すれば、ユードは辺境伯になれるのだ。逆玉の輿どころでない、とんでもない大出世だ。野心のある男の前に転がる、千載一遇のチャンス。世間知らずの小娘に媚びを売るくらい、誰でもするだろう。

 ――まして、ユードには本当に愛するディートリンデ様を手に入れる、というもっと大きな目標があるのだから。
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