病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

21、聖杯の騎士

 パルシヴァル・フォン・グレイル。
 ユードの告げた名に、わたしの思考が固まる。

 彼は騎士の家に生まれたが家族を失い、平民としてもとの名を捨てたと聞いていた。
 そして、オーベルシュトルフ侯爵の養子としてわたしの婿に――

「……なぜ、偽名を……?」

 ユードが口元に皮肉な笑みを浮かべ、言った。

「滅びた国の最後の王族なんて、ロクな目には遭わない。殺されるか奴隷に売られるか……男娼に堕ちたこともある。名前と年齢を偽り、他の人間のフリをするのが、一番安全なんだ」
 
 ユードがわたしの手を取り、歩き始める。

「ゆっくり、説明する。まずは、反論せずに全部聞いて欲しい」
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