病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
27、夜会
ブロムベルクで過ごしていたわたしたちのもとに、帝都の父から手紙が届く。
――この社交シーズンは貴族たちに顔つなぎをするから、そろそろ帝都に戻るようにと。
予想されたことなので、わたしたちは素直にそれに従った。
乳母のヒルダと別れを惜しみ、魔導飛行船に乗って帝都に向かう。
「お館様の手紙によれば、帝都ではお嬢の警備を倍に増やしたってさ」
ヨルクの言葉に、展望デッキから風景を見ていたわたしは思わず振り向いた。
「倍? 大げさではなくて?」
「お嬢が置いてきた、例のアタオカ令嬢の手紙、効果覿面だったみたい」
あの手紙には、オーベルシュトルフ侯爵がブロムベルク辺境伯である父を追い落とすつもりであることも仄めかされていたので、父は警戒を強めているそうだ。
「ご令嬢の単なる思い過ごしかもしれないけれど、捨て置けないってさ」
ヨルクが見せてくれた父からの警備体制の命令書を一瞥し、わたしは眉間に皺を寄せてしまう。
「そうなのよね……ちょっと常軌を逸しているわよね」
もし、ディートリンデ様にも前世の記憶があり、かつ、ユードが忘れられなくて彼を取り戻したいと思っているのなら、どうあってもわたしを排除しようとするのでは。
「……ヨルク、帝都に戻ったら、ディートリンデ様について調べられる? お母さまとかおばあ様がどんな方なのかとか――」
「そんなの調べるのは難しくないけど、なんで?」
「ほら、その、家庭の教育方針とか、そういうのも何かのヒントになるかしらって……」
ヨルクが首を傾げ、腑に落ちない表情ながら請け合った。
「わかった。やっておく。そんなのが役に立つとは思えないけど」
「ありがとう。お願いね」
そしてふと疑問に思う。――彼女に前世の記憶があるなら、わたしの死後、彼女はどうして死んだのかしら?
――この社交シーズンは貴族たちに顔つなぎをするから、そろそろ帝都に戻るようにと。
予想されたことなので、わたしたちは素直にそれに従った。
乳母のヒルダと別れを惜しみ、魔導飛行船に乗って帝都に向かう。
「お館様の手紙によれば、帝都ではお嬢の警備を倍に増やしたってさ」
ヨルクの言葉に、展望デッキから風景を見ていたわたしは思わず振り向いた。
「倍? 大げさではなくて?」
「お嬢が置いてきた、例のアタオカ令嬢の手紙、効果覿面だったみたい」
あの手紙には、オーベルシュトルフ侯爵がブロムベルク辺境伯である父を追い落とすつもりであることも仄めかされていたので、父は警戒を強めているそうだ。
「ご令嬢の単なる思い過ごしかもしれないけれど、捨て置けないってさ」
ヨルクが見せてくれた父からの警備体制の命令書を一瞥し、わたしは眉間に皺を寄せてしまう。
「そうなのよね……ちょっと常軌を逸しているわよね」
もし、ディートリンデ様にも前世の記憶があり、かつ、ユードが忘れられなくて彼を取り戻したいと思っているのなら、どうあってもわたしを排除しようとするのでは。
「……ヨルク、帝都に戻ったら、ディートリンデ様について調べられる? お母さまとかおばあ様がどんな方なのかとか――」
「そんなの調べるのは難しくないけど、なんで?」
「ほら、その、家庭の教育方針とか、そういうのも何かのヒントになるかしらって……」
ヨルクが首を傾げ、腑に落ちない表情ながら請け合った。
「わかった。やっておく。そんなのが役に立つとは思えないけど」
「ありがとう。お願いね」
そしてふと疑問に思う。――彼女に前世の記憶があるなら、わたしの死後、彼女はどうして死んだのかしら?