病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

3、皇帝と大魔術師

 結婚式の最中に前世の記憶を思い出し、わたしは耐え切れず気を失う。
 幸い、隣にいた花婿ユードがわたしを支え、抱きかかえて退場した、らしい。――控室で意識を取り戻したわたしは、心配そうにのぞき込むユードの青い瞳を見て、前世の続きかと息を飲んだ。
 
「大丈夫ですか? 体の具合は」

 低い声で問いかけられ、こんな時でもわたしの胸は(とどろ)いてしまう。

「いえ、たぶん、ただの貧血よ。――昨日、緊張で眠れなかったから。それと、コルセットの締めすぎだと……」

 結婚式だからって、気合を入れて締めすぎた。最初からふらふらだったし。わたしの答えに、ユードが正面に膝をついて見上げるような体勢で言った。

「この後、お屋敷で披露宴ですが、無理なら――」
「大丈夫です。ありがとう。わたしが倒れてしまって、お客様に失礼はなかったかしら」

 何しろ皇帝陛下のご臨席を賜っているのだ。
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