病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

7、仮病作戦

 初夜を無事に乗り切り、やれやれと思ったのもつかの間。翌朝、早々に父から呼び出しを受ける。朝食もそこそこに父の部屋に出向けば、苦虫をかみつぶしたような表情の父に、叱責された。

「ユードを寝室から追い出したそうだな」
「えっと……」

 ギロリと睨まれて、わたしは思わず目を逸らす。

「あれは平民だが、剣の腕前も用兵も、他に抜きんでておる。良かれと思って選んだ相手だが、気に喰わぬのか?」
「いえ、その……」
「ただでさえ、身分差のある結婚ゆえに、あれこれ言う者がおる。お前のやりよう一つで、批判されるのはあちらだ。周りの思惑を思いやれ。ユードが平民出だからとお前が蔑めば、周囲の者はさらにあやつを軽んずる。それはブロムベルクの将来に陰を落とす」
 
 わたしがユードとの初夜を拒んだせいで、ユードが非難されると言われ、わたしは唇を噛む。
     
「お父さま、わたし……身分差で彼を拒んだわけではございません」
「ならばなぜだ。昨日、たしかにお前は体調がすぐれなかったかもしれん。だが、寝室から追い出すのはやりすぎだ」
「申し訳ありません……でも……」
 
 父は太眉の下からわたしを睨む。
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