病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

12、尋問

「身体に聞こうか――」

 低く甘い声がわたしの背筋から脳天を突き抜け、全身に痺れが走る。――なに、これ、いったい――

 わたしはその日、薄い綿モスリンの白いブラウスに、白地に赤い刺繍とフリルがふんだんに使われた、足首までのスカートをはき、背中でレースアップするタイプの、小花刺繍を散らした緑色の胴着(ビスチェ)を付けていた。ユードの手がブラウスのボタンを外し、胸元を広げたと思ったら、もう一つの手が背中に回り、胴着の紐を緩めてぐいっと引き下ろした。当然、胴着で押さえつけられていた、わたしの乳房が彼の目の前に零れ落ちる。
 
「なっ……!」
 
 ブラウスのすき間からねじ込まれた彼の大きな手が、わたしの胸の膨らみをぎゅっと握った。

「やめてっ、人を呼ぶわっ!」
「夫が、自分の部屋で妻の肌に触れて、誰が咎めると言うのです?」

 ゆっくり、感触を楽しむように揉みこまれて、わたしは恥ずかしさとおそろしさで身をよじった。

「ユード、待って、お願い……!」
「もう、さんざん、待ちましたよ」

 ユードの表情にはどこか昏い影が差して、わたしは息を飲む。両手をユードの肩に突っ張って、渾身の力で押し返そうとしたが、ユードの逞しい身体はびくともしない。

「セシリア……俺の何が知りたい。教えてくれ。どうして俺を拒む……」
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