病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

15、追いかける男

「……ユード? どうして、ここに……?」
 
 ヨルクの背後から現れたのは、間違いなくユードその人で、だがその青い瞳はなんとも仄暗い光を湛えて、わたしは思わずゾッとした。
 ユードは強引に船室の中に踏み込むと、後ろ手に扉を閉める。
 
「どうして? 妻が護衛騎士と駆け落ちしたら、何はさておいても追いかけるだろう?」
「か、駆け落ち? ……誰と、誰が?」

 わたしはヨルクとアニーを振りかえり、ヨルクが叫んだ。

「ち、違う! ()()()()()そんな仲じゃない!」
「そうよ! ()()()()()()()()何でもないわ! 誤解を招くようなことは何も……」 

 ヨルクがぶんぶんと首を縦に振っている。だが、ユードはその様子を胡乱げに見るだけだ。

「ヨルクと結婚する話も出ていたと――」
「まさか! そんなのとっくの昔に立ち消えになってます!」
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