先生と私の三ヶ月
 それから一時間弱で先生の住む横浜の山手に着いた。山手は江戸時代末期には外国人が住む事を許された土地で、今でも洋風の館が多く残っている高級住宅街である事を黒田さんが説明してくれた。坂の上の望月先生の家もまさに洋館だった。

 立派な鉄製の門扉の先にあるお庭は広く、公園のよう。綺麗に切りそろえられた木々もよく手入れされているのがわかる。そして、木々に囲まれるようにして、イギリス風の白い洋館が建っていた。

 素敵過ぎてため息が出ちゃう。
 なんかおとぎ話の中に入ったみたい。

 洋館って物凄く望月先生のイメージに合っている。
 きっと気品のある女性なんだろうな。

「どうされました?」
 玄関前で佇む私を黒田さんが不思議そうに見た。

「こういう豪邸、テレビでしか見た事なかったから」

「初めて来る人は驚きますよね。元々は望月先生のおじいさんが建てた家らしいですよ」

「じゃあ、先生は子供の頃からこの家に出入りしてたんですか?」

「十歳の時から住んでるって聞きました。先生は祖父母に育てられたって言ってました」

 それって先生のご両親が不在だったって事? どうしてなんだろう? 質問したいけど、ズケズケと先生のプライバシーを聞くのは失礼だよね。

「さあ、どうぞこちらです」

 ステンドガラスがハメられた両開きの玄関ドアを黒田さんが開けてくれた。
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