先生と私の三ヶ月
「なあ、今日子。助けてくれよ」
情けない純ちゃんの声が聞えた。男らしい人だと思っていたけど、こんなに女々しいなんて知らなかった。私はこんな人にしがみついていたんだ。
「このまま帰って! そしたら先生に何もなかったって話すから」
純ちゃんの顔は見ずに叫んだ。今は純ちゃんを見るのが怖い。
「わかった。帰るよ」
先生の背中越しに純ちゃんがふらふらっと歩いて行くのが見えた。
ドアが閉まった瞬間、気が抜けてソファに崩れた。
「ガリ子、大丈夫か」
先生が労わるように私をソファに寝かせてくれた。
「先生、すみません。お恥ずかしい所をお見せして」
「いいんだよ。俺こそすまん。帰りが遅くなって。怪我はしていないか? 殴られてはいないか?」
「大丈夫です。ちょっと強引に押し倒されただけですから。純ちゃん、私に手をあげた事は一度もないんです。なんか今日は仕事で嫌な事があったみたいで、それでむしゃくしゃしていて、お酒を飲んで私を……」
声が詰まった。ショックだった。あんな風に純ちゃんが、強引に私の上に乗って来て、無理矢理、体を触るなんて。夫婦としての信頼が裏切られた。
「わかったから。無理に話すな。いくら旦那だからって、体の大きな男に強引に押し倒されて怖かっただろう」
いつだって先生は私の気持ちを察してくれる。
「……はい。怖かったです」
頷くと先生がよしよしと慰めるように頭を撫でてくれた。先生の大きな手が愛しい。ずっとこの手を掴んでいたい。でも、結婚している身で純ちゃん以外の男性を想う私をきっと、亡き両親は許さないだろう。
亡くなる直前、お母さんに純也さんの手を離しちゃダメだと言われた。その時、あまりにも苦しくて、純ちゃんに好きな人がいる事を打ち明けようとした。だけど話の核心に入る前に、お母さんは私の言葉を遮って、夫婦は何があっても一緒にいるものだと言った。そして、お母さんだって、お父さんといろいろあって悲しい想いも、悔しい想いも沢山して来たのよって言われた。何も言い返せなかった。
お母さんから見たら、私は忍耐が足りないのかもしれない。けれど、こんな悔しい想いをしてまで、純ちゃんとの結婚生活を続けていく事に意味はあるんだろうか。
情けない純ちゃんの声が聞えた。男らしい人だと思っていたけど、こんなに女々しいなんて知らなかった。私はこんな人にしがみついていたんだ。
「このまま帰って! そしたら先生に何もなかったって話すから」
純ちゃんの顔は見ずに叫んだ。今は純ちゃんを見るのが怖い。
「わかった。帰るよ」
先生の背中越しに純ちゃんがふらふらっと歩いて行くのが見えた。
ドアが閉まった瞬間、気が抜けてソファに崩れた。
「ガリ子、大丈夫か」
先生が労わるように私をソファに寝かせてくれた。
「先生、すみません。お恥ずかしい所をお見せして」
「いいんだよ。俺こそすまん。帰りが遅くなって。怪我はしていないか? 殴られてはいないか?」
「大丈夫です。ちょっと強引に押し倒されただけですから。純ちゃん、私に手をあげた事は一度もないんです。なんか今日は仕事で嫌な事があったみたいで、それでむしゃくしゃしていて、お酒を飲んで私を……」
声が詰まった。ショックだった。あんな風に純ちゃんが、強引に私の上に乗って来て、無理矢理、体を触るなんて。夫婦としての信頼が裏切られた。
「わかったから。無理に話すな。いくら旦那だからって、体の大きな男に強引に押し倒されて怖かっただろう」
いつだって先生は私の気持ちを察してくれる。
「……はい。怖かったです」
頷くと先生がよしよしと慰めるように頭を撫でてくれた。先生の大きな手が愛しい。ずっとこの手を掴んでいたい。でも、結婚している身で純ちゃん以外の男性を想う私をきっと、亡き両親は許さないだろう。
亡くなる直前、お母さんに純也さんの手を離しちゃダメだと言われた。その時、あまりにも苦しくて、純ちゃんに好きな人がいる事を打ち明けようとした。だけど話の核心に入る前に、お母さんは私の言葉を遮って、夫婦は何があっても一緒にいるものだと言った。そして、お母さんだって、お父さんといろいろあって悲しい想いも、悔しい想いも沢山して来たのよって言われた。何も言い返せなかった。
お母さんから見たら、私は忍耐が足りないのかもしれない。けれど、こんな悔しい想いをしてまで、純ちゃんとの結婚生活を続けていく事に意味はあるんだろうか。