先生と私の三ヶ月
 男は黙ったまま植物の観察をするみたいに視線を下げてじーっと私の顔を眺めていた。 

 私も顔を上げて男を見た。

 オレンジ色の薄灯りに照らされた顔は初めて見る顔だった。年は30代後半ぐらいで端正な顔立ちをしている。前髪を上げていて、形のいい広い額が見える。キリッとした眉に、二重瞼の大きな目が印象的で、鼻筋はスーッと通っていて、唇は適度に厚みがあってなんかセクシー。

 なんというか、この人、本当に綺麗な顔をしている。

 急に落ち着かなくなって来た。
 私には純ちゃんがいるのに、いくらイケメンだからって動揺し過ぎだ。

 それにしてもなんでこの人、私の顔を見ているの?
 そんなに見つめられたら穴が空くって。

 もしかして、私に気があるとか? いや、それはない。こんなイケメンが私に気を持つわけない。私は至って平凡な顔をしているんだから。

「あんたさ、そのメタルフレームの眼鏡はイモだな」

 え、いも?
 今、いもって言った? 私のお気に入りの眼鏡を“いも”ってバカにした?
< 17 / 304 >

この作品をシェア

pagetop