先生と私の三ヶ月
 先生の家の2キロ圏内には、ドーソンの他に、セブン、ファミマ、サークル、デイリーの5種類のコンビニがあり、毎日、その5種類のどれかに行かされている。しかも、必ず深夜。

 そうなるのは先生の執筆時間が深夜だからだ。
 だいたい先生は夕方ぐらいからどこかに出かけ、酒の匂いをさせて午後11時に帰ってくる。それからお風呂に入り、執筆タイムに入る。この執筆タイム中の夜食の為に私は毎晩、コンビニまで自転車をこいでいる。

 今夜もそろそろだと思って、ジーパンにTシャツ姿で待機をしていた。
 車で行く方が楽だったけど、先生の家のガレージにはベンツとフェラーリしかない。
 国産のコンパクトカーに乗っている身としては、そんな高級外車恐ろしくて運転できない。私には初日に黒田さんが買い物用に調達してくれたママチャリで十分だ。

 今夜も外灯があまり点いていない、暗い坂道を自転車でサァーッと一気に下る。坂の下まで来るとセブンがある。ここで用事が済めば楽なのにな。

 セブンにバイバイをして住宅街の中を進む。
 次に見えて来たのがファミマ、そしてサークル、デイリー。
 全部にさよならをして、今度は立ちこぎに切り替えて坂道を上る。
 
 自転車で坂道を上るのは本当にくたびれる。
 ペダルを押すごとに太腿が痛い。坂の半分まで来ると限界。
 この坂を自転車から降りずにのぼり切った事はまだない。
 でも、三ヶ月、こんな事をしていたら、いつかは上れそう。

 坂の上まで来ると見えた。ドーソンだ!
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