恋と、餃子と、年下男子

パワハラの真相

 商品開発部に異動してから五日目。
 新しい冷凍餃子のターゲットは「子供」に決まった。ターゲットは購入者である大人にするのが普通なのだが、今回はあえてそこを外してみようということになったのだ。
 
「でもさ、実際子供が自分で買うわけじゃないじゃん? だから、子供のいる家庭向けってことじゃないの?」
「いや、でもヤッシー。今はシングル家庭も多いから、子供が自分で買うこともあるかもしれないよ?」
 ナベさんの意見に、ヤッシーは「そっかあ……」と頭を抱える。
「子供が自分で買うにしても、親が買うにしても、子供心をくすぐる感じが必要ですよね」
 そう言ってみたものの、私の身近に子供なんていない。自分の子供時代を思い出してみるけど、なかなか難しい。
「……やっぱりロシアンルーレットがいいんじゃ」
 ボソリと久保君が呟く。いや、あなたどんだけロシアンルーレット推しなのよ。
「とりあえず、今週中にいくつかアイデア出して、早速試作に入ろう。奇抜なものでも構わないから、意見があったらどんどん出して」
 ナベさんがそう締め括ると、全員が「はーい」と緩い返事をした。
 
 新しい商品を生み出すことの大変さを、正直営業部にいた頃はわかっていなかったのかもしれない。既にあるものをどう魅せ、どこに置き、どう販売してもらうか——。私たちがやっていたのはそういう仕事だ。それだってもちろん、販売戦略を考えたりしなきゃならないから大事な仕事だけど、商品開発はゼロから始める為、より自由でより難しい。
< 15 / 50 >

この作品をシェア

pagetop