笑顔が消える
出逢い⑤

彼女、彩代さんの話しは驚きと共に
怒りでどうにかなりそうだった。

何度も深呼吸して
怒りを抑え込む。

彼女は·····彩代さんは······
五年も······

彼女の悲しみ、
苦しみが深いものだとわかる。

そんな男?夫を
まだ、彩代さんは、
愛しているのだろうか?

「まさか、夫が私を裏切るなんて
本当に思っていなかったから
悲しくて苦しかった。」
と、泣きそうな顔をする彩代さん。
そんなに·····と、思うと
胸が張り裂けそうに·····

彩代さんは、続けて

「何年も見学にかかるほど
物件があるとも思えません。

それに、毎週金曜日に夜中まで残業が
あるはずもなく。

もう、夫は私でない人を愛し
その人に夢中なんだとわかりました。

私が好きだった
夫、修也さんは
もう、いないんだと。

それなのに
マンションが決まったから
見に行くと
言い出した時は、
この人は、何を言っているのだろうと
一緒に住むつもりがないから
彼女と決めたはずなのに
だから
『なぜ、今更私が見ないと行けないのか』
と、言いましたが
行くの一点張りで。

やはり、夫の相手は、
不動産の営業の女性でした。

二人でアイコンタクトをとったり
名前を呼び捨てにしてしまい
ごまかしたり
見ていられませんでした。

物件の中を
私が、見てもしかたないと
思いながら
ざっとみていたら
『なんで何も言わないんだ失礼だろ。』
と 怒鳴るのです。
なぜ、私が怒鳴られないと行けないのか
私は呆れて、そこから離れました。
だけど······
悔しくて····悲しくて·····
どうして、ここまで追い込まれないと
行けないのかと·····
一人では、どうにもできない
気持ちを香菜恵に縋ってしまいました。
情けないです。

私達夫婦は、結婚が決まった時に
約束をした事があったのです。

もし、万が一でも
お互いが別の人に気持が向いたら
きちんとしてから
次に進もうと。

夫は、そんな事も忘れて
しまったようです。

子供達が、夫と彼女が
一緒の所を何度か目撃して
悩んで私に話に来てくれました。 
子供達と話せた事で
私は、肩の荷が降りました。

子供達には、ショックを
与えてしまい申し訳なかったのですが。
おかげで気持を決めることができました。

夫とは、きちんと離婚します。

子供達も夫の両親も
了承してくれました。
息子が義父に相談していたみたいで。

改めまして小野さん。
本当に、心配して頂いて
ありがとうございます。」
と、言うと
小野さんは、私を抱きしめて
「ずっと、待っています。
いつの日か、答えをきかせて下さい。
それまでは、一人で抱え込まずに
何でも話して下さい。
友人として知人として
接しますから。」
と、言ってくれたから
「ありがとうございます。
でも、その間に
小野さんに良い方が
できましたら、遠慮なく
その方を選んで下さいね。」
と、言った。

本当は、待っていて欲しい。
だけど
また、修也さんみたいに
私に飽きれられたら
別の人に目を向けられたら
ずっと、一人の方が楽では?
と、思う自分もいた。
二度も、こんな思いはしたくない。
自分が壊れてしまう。
と、思っていると
「今は、何を言っても
信じられないでしょう。
だから、我慢します。
でも、私は、あなた、彩代さんが
好きです。」
と、言って一度ギュッと抱きしめてから
家の近くまで送ってくれた。

小野さんに連絡先を交換され
小野さんからラインが届いた。
《本当は、そんな家に帰したく
なかった。
だけど、今は我慢。
ゆっくり休んで下さい。》
と、来ていて
おかしくて笑ってしまった。

ああ、小野さんのおかげで
この家の中で
久しぶりに笑った。

私は、
《お休みなさい。》
と、だけ送り
シャワーを浴びて
布団に入り
本当に久しぶりに
ゆったりと眠ることができた。
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