恋をするのに理由はいらない
starting
 ボールが弧を描き、アタッカーの手に吸い込まれいくのを見るのが好きだった。
 小学生の頃、両親に連れられ見に行った、バレーボールの試合。私はその迫力と、美しさに魅入られた。

「私もやってみたい!」

 そんな一言が、私の人生を変えた。こんなことになるなんて、思いもせずに言ったその一言が。

(みお)ちゃんはバレー好き?』
『うん! 大好き! 楽しいもん!』

 小学生の私に尋ねたのは、憧れのアタッカー。

そして……

『澪さん! ください!』

 私から放たれたボールは、日本を背負って立つエースの元へ飛び立った。

 今でも思い出す。
 彼女の手から打たれたボールが、相手のコートを割るその瞬間を。
 メダルに手が届いた瞬間だった。

 思えば、あのときが人生の頂点だったのかも知れない。
 あの熱狂から2年と半年以上が経ち、私は一人そんなことを思っていた。
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