破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「単なる憶測に過ぎないけど、ある程度の記憶の改竄もあったかもしれない。族長の息子なんだもの、それなりに魔力を持っているでしょう?」

「待って。そうしたら……グウィネスは、彼に付き合っていた当時の気持ちと記憶を、取り戻す事が出来るわ」

「そうよ。それだわ。だから、今付き合っている私が居ても、諦めないのよ。だって、その時には自分が一番に愛されていたんだもの。私にも誰にも、負けるはずがないと思っている」

 ラウィーニアはそれを聞いて、大きなため息をついた。

「なるほどね。グウィネスの無茶苦茶な要求も、それでなんとなく理解が出来たわ。別れた男に執着している訳ではなくて、彼女の中では彼女に恋をした記憶を失っているだけの現在進行形の恋人なのね」

「そうよ。記憶さえ取り戻せば元通りだと思っているわね」

 私が肩を竦めてそう言えば、ラウィーニアはちょっと面白そうな表情をしている。

「どうやって、戦うの? ディアーヌ。きっとグウィネスは未だにランスロットの事を自分の恋人だと、思っているわよ」

 幼い頃から良く知っている彼女は、こういう時に私が逃げ出すことなく、グウィネスと戦うという事をわかっている。

 どんなに美しかろうが、お金を持っていようが、恋は意中の人に選ばれた方が勝つ。だとすると、もし後々後悔したくないのなら、彼に選ばれる努力を惜しまなければ良い。

「私のやり方で戦うわ。だって、喧嘩を売って来たのは向こうだから。私は大国レジュラスに仕えるハクスリー伯爵の娘なのよ。彼女のように便利な呪術は使えないけれど、私のような立場の人間しか出来ない事もあるわ」

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