破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 クレメントと付き合っていた頃には、そんなこと言われたこともなかったんだけれど。彼女はランスロットの事は、余程気に入っているのかもしれない。

「あら。可愛いじゃない。新しいドレス?」

 晴れて王太子の婚約者となった彼女のために、用意されている王族の住む内宮に近い部屋を訪ねれば、準備万端だったラウィーニアは早速城中にある訓練場へ行きましょうと私に素早く目配せをした。

 ラウィーニアが着ているドレスはすっきりとした、光沢のある灰色。黒髪が色っぽさを醸し出す上品で、とても彼女らしいデザイン。

「そう。この前に、いつものメゾンで仕立てたところなの」

 私が着ているデイドレスは、明るい黄色で目にも鮮やか。

 三人ほどの専属護衛騎士を引き連れたままのラウィーニアと並んで歩きながら、彼女がこちらに向ける意味ありげな視線は見ない振りをした。新しくて気に入っている様子のドレスを着ているからって、その人が気合いを入れているとは限らない。

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