破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 何かを言えば簡単に通る、至上の存在であるからこそ私情が叶うのも程度があるかもしれない。だから、王となるのなら帝王学を学ばねばならないというのは、必要なのかもしれない。私を捨て公のため、自分の人生を捧げる。それは別に彼の選んだことでも何でもなく、ただ王家に産まれたからという理由で。本当に、大変な立場だと思う。つまらない恋愛沙汰で、彼の持っている特権を行使させたくはなかった。

 話をする時間なら、旅行から帰った後でもこの先たっぷりとあるはずだもの。

「ディアーヌ!」

 自分用に用意して貰った部屋に備え付けのテラスでのんびりと寛いでいた私は、ラウィーニアが呼ぶ声に顔を上げた。

「ラウィーニア? どうしたの?」

「せっかくだから、少し街に出ましょう。ほら、早く用意して」

 ラウィーニアは、何を興奮しているのか頬を紅潮させてそう言った。

 旅先の宿屋と言うこともあり、一応は私も部屋の中に居ても誰かに見られても大丈夫な状態ではあるけれど、その慌て振りが理解出来ずに首を傾げた。

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