【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

30.涙に濡れたプロポーズ

「……よく財部が許可を出したな」


 コーエンはクララが持ち帰った資料を眺めながら、感嘆の声を上げた。

 今回閲覧許可が与えられたのは、各地の財政状況だけではない。貴族の収支状況の資料も貸し出しが認められた。

 正直、コーエンもフリードもここまでの結果を期待していなかったのだろう。膨大な資料を前に、ただただ目を丸くしている。


「一体、どうやって説得したんだ?」

「なにも。ただ、時間をかけて口説いただけよ」


 ふふ、と目を細めてクララは笑う。

 クララは何も、嘘は言っていない。ただ、口説いた相手が違うだけだ。

 ゆるく束ねられたクララの髪の毛の中で、ピンク色をしたダイヤモンドが人知れず輝く。
 かつてヨハネスに貰い、コーエンを通じて返却した髪飾りが、契約の証として、クララの手元に返って来たのだ。


『もう外しちゃいけないよ。王位継承戦の結果が出る、その時まで』


 耳元で囁かれたその言葉を、クララは一人噛みしめる。

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