【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
(一体なにがあったんだろう)


 クララは一人、首を傾げる。

 見れば、スチュアート伯爵は顔を真っ赤に染め、悔し気に歯を食いしばっていた。騎士たちが進路を遮っているというのに、今にも飛び出していきそうな様子である。

 その時、クララの視線に気づいたのか、スチュアート伯爵がこちらを見た。狂気に満ちた血走った眼差し。クララは思わず後ずさりする。

 すると、スチュアート伯爵は目をカッと見開き、拳をブルブル震わせた。


「……っおまえ!おまえは、たしか宰相の…………」


 スチュアート伯爵はそう口にすると、クララ目掛けて走ってくる。


「えっ!?」


 驚くべき速さでクララの目の前に躍り出た伯爵は、乱暴な手つきでクララの胸倉を掴んだ。


「そうか……分かったぞ!全部おまえと宰相の差し金だな!レイチェルが!娘が王太子妃の座に就けないよう、私を罠に嵌めたのだろう!?」

(罠!?なんでそういう話になるの!?)


 当然クララはそんなことをしていない。

 それに、クララの父親だって、クララが王太子妃になることを望んでいるわけではない。地位もこれ以上上がりようがないのだし、伯爵を陥れる理由など、あるはずがなかった。


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