【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

34.罪と罰

 辺りは騒然としていた。

 広場の北側からは騎士たちが、西側からは文官たちが押し寄せる。

 スチュアート伯爵はコーエンに腕をねじり上げられ、ガクリと両膝を突いていた。けれど、彼の頬は怒りで真っ赤な上、瞳は爛爛と輝いている。とてもじゃないが、『観念した』という人間の表情ではない。


「クララ、大丈夫か?」


 騎士に伯爵を引き渡しながら、コーエンは尋ねた。


(全然、大丈夫じゃない)


 足はガクガク震えているし、伯爵に掴まれた辺りがズキズキと痛む。

 あんな風に剥き出しの悪意に触れるのは、生まれて初めてだった。敵意を向けられることはあっても、直接的にクララを害そうという人間はこれまでいなかったのだ。

 未だ、まともに返事もできずにいるクララを、コーエンはそっと抱き寄せる。ふわりと漂う汗の香りに、何故だか涙が溢れた。


「貴様では――――太子の位も得ていない人間では話にならないと!先程もそう言っただろう!?何故、私の邪魔をするんだ!」


 唾を撒き散らしながら、伯爵は吠えた。両腕を拘束され、頭を押さえつけられているにも関わらず、すごい勢いだ。

 コーエンは冷ややかな瞳で伯爵を見下ろすと、クララを庇うようにしながら、前に躍り出た。


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