【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「真面目に仕事をやっていたら、当然分かるよね?自分たちのトップである財務大臣が不正をやっているって。だけど、それを公にすることは難しい。皆自分の身が大事だし、大臣本人に罪を追及すれば、マッケンジーのように脅されるか、揉み消されるだけ。何とかしたいと思っていても、頼みの綱のフリードとカールへの資料の貸し出しは禁止されている。だから、僕に資料を貸してくれた文官は、本当に必要な資料を、出来る限り多く提供してくれたんだよ。真実を明らかにするため――――僕等に助けを求めるために」

「そう。そのおかげで、マッケンジー家への脅迫だけじゃなく、伯爵が財部の資料を改竄して、公金を横領していることも確認できたんだ」


 何ともつっけんどんな対応をされたと思っていたが、どうやらあの文官も、彼なりに苦しんでいたらしい。根が真面目な分、不正を見逃すことで、自身も罪の片棒を担いでいた気がしていたのだろう。


「分かった!金は……金は全て返そう!それで良いだろう?」


 伯爵はダラダラと汗を流しながら、笑顔を浮かべた。
 絶望と希望の狭間でグラグラ揺れた、見苦しい笑み。直視に堪えない酷い表情だった。


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