【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
【終章】物語の終わりとはじまり

37.終わりと始まりとクララだけに許された名前

 秋の良く晴れた日。
 空には色とりどり花びらや紙吹雪が舞う。太陽の光が美しく降り注ぎ、キラキラと輝いて見える。


「すごい……わたし、こんなの初めて見た」


 王都を見渡せる特等席にコーエンと二人腰掛け、クララはウットリと息を呑む。

 ガラス越し、遠く離れた民の興奮がこちらまで伝わってくる。ドキドキと高鳴る心臓を持て余していると、コーエンがそっとクララの手を握った。


「俺も。想像以上」


 手のひらから伝わってくる、コーエンの鼓動はトクトクと早い。青い瞳が緊張と高揚感でキラキラと輝いて見える。笑顔まで神々しく見えて、クララは密かに胸をときめかせた。


「玉座からの眺めはどうだい?お二人さん」


 楽し気な声。
 振り向くと、ジェシカが二人に向かって穏やかに微笑んでいた。


「ジェシカ」
「おめでとう、フリード。クララも」


 美しくドレスアップされたジェシカが目を細める。
 まるで自分のことのように嬉しそうな笑顔。クララも胸が熱くなった。


「しっかし、フリードはせっかちだよねぇ。王太子即位と同時にクララとの婚約まで発表するんだもの。もう少しのんびり行くのかと思っていたのに」


 ジェシカはそう言ってクックッと喉を鳴らす。
 揶揄するような瞳。クララはそっと頬を染めた。


「寧ろ『王太子即位と同時に即結婚』を我慢したんだ。褒められても良いぐらいだと思うけど」


 コーエンはそう言って唇を尖らせると、プイと顔を背けた。

 今日は、長らく空席だった王太子の椅子が埋まる日――――コーエンが王太子として即位する日だ。

 そして、彼の即位と同時に、クララがコーエンの婚約者として内定したことが発表される。


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