【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
(なんだかすごくむず痒いなぁ)


 まだ正式にアナウンスされていないものの、相手がクララであることは、既に皆の知るところとなっている。
 おめでとうと声を掛けられる度、クララは嬉しくて恥ずかしくて堪らなくなった。


「まったく、フリードは相変わらずだねぇ」


 ジェシカよりもやや低めの揶揄するような声。次いで、呆れたようなため息が聞こえる。

 見ればそこには、カールと彼の婚約者であるイゾーレ、それからヨハネスが立っていた。


「為政者は我慢強くないと。クララもそう思わない?」


 ヨハネスはそう言ってクララに笑いかける。コーエンは眉間に皺を寄せながら、ヨハネスを睨みつけた。


「別に、待たないなんて言ってないだろう」


 その瞬間、クララの心臓が大きく跳ねた。

 コーエンが先程よりも強く、手を繋ぎなおす。たったそれだけのことなのに、クララの心は簡単に疼く。
 待つと言う言葉とは裏腹に、本当はクララを強く求めてくれている。そう言われているような気がして、とても嬉しかった。


「ふぅん。まぁ良いけど――――あぁ、そうだ。これ、レイチェルから、君宛の手紙を預かっているんだ」

「レイチェルから?」


 ヨハネスが懐から取り出した手紙を、クララは急いで開く。
 気の強そうなーーけれど品のある文字が並ぶ。クララは急いで文章に目を走らせた。

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