【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

39.【番外編】王太子婚約者の恋愛事情(後編)

 ヨハネスとクララは、宮殿までの道のりを並んで歩いた。クララは王太子の婚約者で、密室で異性と二人きりになるべきではないし『内緒話をする時は外の方が良い』とヨハネスが言うからだ。


「コソコソするから怪しまれるんだよ。堂々としている方が余程良い。もっとも、今から君に話すのは機密事項ではないけどね」


 勿体つけた言い方に、クララは僅かに片眉を上げる。


「機密事項じゃないけど提供したい情報? 一体どんな?」

「もうすぐ隣国の王女が来訪することはクララも知っているだろう?」

「ええ、それはもちろん」


 四方を海で囲まれたシャルゾネリア王国。渡航には大きな危険を伴うため、外交には大使を立てられることが多い。
 けれど今回、コーエンの王太子即位と、クララとの婚約を祝うため、王女アリスの来訪が決まっていた。


「アリス王女はね、絶世の美女らしいんだ」


 ヨハネスはそう言って、悪戯っぽく瞳を細める。それで?と視線で先を促してみても、彼はニコニコと微笑むばかり。


「…………へーー、そうなんですね」


 思っていたよりずっと、情報の重要性が低い。クララの眉間がピクピク動いた。


「大事なことだろう? 美しいっていうのは大きな武器だよ。なんでも、世話役にフリードとジェシカが指名されたらしいし、警戒しておいた方が良いんじゃないかなぁと思って」

「コーエンとジェシカ殿下が?」


 これにはクララも驚いた。コーエンは婚約を祝われる側であり、世話役に指名されることは通常ありえないからだ。


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