【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「意地が悪いですね……情報提供するならそっちを先に言ってくださいよ」


 クララの言葉に、ヨハネスは扇で口元を隠す。どうやら笑っているらしい。クララはムッと唇を尖らせた。


「本来なら、僕やカールが世話役を務めるべきだし、実際そのように準備をしていたんだ。だけど、先方の希望じゃ仕方ない。今頃父上がフリードに打診をしている頃だろうよ」

「なるほどね」


 先程のジェシカとのやり取りを思い返しつつ、クララは小さく唸り声を上げる。

 祝われる対象であるコーエンを世話役に立てる意味――――しかもコーエンは王太子で、相手は隣国の王女だ。


「隣国はアリス殿下とコーエンとの結婚を望んでいる?」

「……そうだね、その可能性が高いと僕は思っている」


 クララと婚約を結んだばかりで考えたくないが、あり得ないことではない。
 事は王族の婚姻。ひいては国同士の力関係や友好度合いにも関わってくる。己の知らぬ間に、全てが根底から覆されてしまう――――そんな可能性だって大いにあるのだ。


「情報を持っているのといないのとじゃ、戦い方が違うだろう?」


 ヨハネスはもう笑っていなかった。淡々と意見を述べつつ、クララの表情を窺っている。


「そうね。教えてくれてありがとう」


 きっとコーエンは、クララには何も言わないだろう。クララは日中王妃教育を受けている時間が長いし、国賓の接待は大事な公務だ。仰々しく構えられたくはないだろう。


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