【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「まぁ、忙しくはなるけどな。クララなら大丈夫だろう?」


 挑発的な笑み。けれどそこに、以前のような意地悪さはなかった。


「うん」


 クララは力強く笑いながら、前を向いた。


「とはいえ、この対決は第2王子――――ヨハネスの得意分野だ」


 フリードは徐に立ち上がると、クララの肩をそっと抱き寄せる。思わぬことに身体を震わせながら、クララはフリードを見上げた。


(えっ、どうして急に?)


 話の内容にそぐわない唐突な行動。そわそわとして、心も身体も落ち着かない。


「ヨハネスは派手好きな分、金に糸目をつけないし、自分をよく見せること――――演出に長けている。おまけに今回、スチュアート家が彼の後見についたことで、その傾向が顕著になったと思う」


 神妙な面持ちでフリードがそう説明する。


「同じ方向性で戦ったらどうしたってこちらの分が悪い。だからこそ、ボクたちも婚約者としての結束を固めないと。ね、クララ」


 なるほど、婚約者同士の代理戦争という側面の強い今回の王太子争い。フリードはクララに再度、己の役割を自覚するよう促したかったのだろう。
 フリードの唐突な行動に理由付けができて、クララはほっと胸を撫でおろす。


(お父様で力になれることがあれば良いのだけれど)


 とはいえ、スチュアート家のような助力の仕方は難しいだろう。そう考えながら、クララは眉を顰める。

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