【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「それで?会場設営はどんな感じになる予定?」


 それからしばらくした後、コーエンは徐に本題を切り出した。


「多分お前の予想通り。まっっったく飾り気なしで、如何に設営を素早く、確実に遂行するかが第一って感じ。その代わり、宴の最中の警備体制なんかは万全だと思うけど」


 シリウスは注文したケーキをフォークで突きながら、唇を尖らせた。


「やっぱりなぁ……だからあいつに設営任せたくなかったんだよ。カールの手にかかりゃ、楽しいことでも、全部軍隊の訓練みたくなっちまうんだ。饗宴どころか葬式状態だろ?」


 コーエンはそう言って腹立たし気に頭を抱える。

 他国から要人を迎えるのだ。当然厳戒な警備が求められる。

 けれど、ピリピリと張り詰めた緊張感の中で楽しめる人間は、きっと極僅かしかいない。自国を侮らせない、という効果は僅かながら期待できるものの、相手に与える印象は最悪だ。


「良いか?大事なのは、相手を楽しませること。その上で国力を見せつけることだ。どっちも欠けたらいけない。意味がないんだよ」

「分かってるよ。でも、相手はカールだぞ?俺たちの話なんて聞かねぇよ」


 半分涙目でそう訴えかけるシリウスに、クララはついつい同情する。


(本当、どうやったらあの堅物を懐柔できるのか、わたしにも教えてほしいわ)


 クララがカールに接しているのはほんの短時間だというのに、毎度ビックリするぐらい疲弊してしまう。それを毎日、長時間続けているのだから、シリウスは相当我慢強い人物だ。クララは思わず、尊敬の眼差しをシリウスへと向けた。


「んーーーーまぁ、あいつの説得は元より出来ると思ってないよ」


 コーエンは困ったように笑いながら、ティーカップの中身をグビッと煽った。


「えっ、だったらどうするの?」


 クララが思わず口を挟む。

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