夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

思いがけない場所での再会


2週間後、家族で京子ちゃんの17回忌のためにお寺に向かった。

ご住職に挨拶をしていると扉が開き、入ってきた人の顔を見て思わず声を出してしまった。

「えっ。岡田部長。どうしてここに?」

驚いている私の横から母が声を掛ける。

「こんにちは。卓人さん。ちょうど私たちも着いたところなのよ」

「お母さん。なんで部長のこと知ってるの?えっ?どうして?」

私の頭の中はクエスチョンマークで溢れている。

「本当に覚えてないの?あなた、『たーくん』って呼んで懐いていたのに…」

「…たーくん?…えぇ、たーくんって岡田部長だったんですか!?」

「ずいぶんよそよそしいな、とは思っていたんだが、やはり気がついていなかったか」

ニヤリと笑われてしまい目を瞬かせ返事をした。

「はい」

なんだ…気がついていたなら教えてくれれば良かったのに…とは思うものの、どおりで私のことジッと見ていたはずだと妙に納得した。
< 22 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop