夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて

二人でみる夢


二人きりになったとたん卓人さんが私の頬を両手で包み込み真剣な瞳を向けて囁いてきた。

「乃愛…本当に俺でいいのか?」

感極まってしまった私は声が出せないけれど、想いを伝えたくて強く頷いた。その時、頬に伝った涙を卓人さんの指が拭いとる。

「乃愛…あぁ…愛してる…」

次の瞬間、お互いの唇が触れあっていた。
何度も何度も、優しい口づけが降り注いでいた。

お互いの想いを伝えあった後の卓人さんの行動はとても早かった。

「怜子がお膳立てしてくれた日のうちに乃愛の両親へ結婚の意思を伝えに行く」と言い、私の家に向かう。

「桂木さん。今日はお忙しいところすみません」と卓人さんが頭を下げる。

両親はいつもとは違う雰囲気の卓人さんを前に普段通りに接しているが、戸惑ってもいるようだ。

「改まってどうした?今日は何か急用でもあったかね?」と父が問いかける。

「今日は乃愛さんのことでお話が…」と話し始めたところで私も卓人さんの横に座り、両親に向き合う。すると卓人さんは頭を下げて両親に想いを伝えてくれる。

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