寡黙なトキくんの甘い溺愛
「え……ト、トキくん……?」
「情けなくなんかない……倉掛さんはスゴイよ」
「す、すごくなんか……っ。自分でやり始めた事なのに、結局は見切り発車で……私、いつもダメなんだ。出来ないのに、やろうとするなんて……やめとけって話だよね」
「へへ」と悲しく笑う倉掛さん。この前、相条さんが「砂那は自分に自信がないから」と言っていた彼女の一面を、今、垣間見た気がした。
もっと突っ込んで話を聞くべきなんだろうか……そんなことないよ、倉掛さんはすごいよって、慰めるべきなのかな?……いや、今はやめておく方がいいか。寝不足だろうし、深い話は重たいだけだ。
慎重に答えを出した後、少しでも安心してもらいたくて倉掛さんに言葉を掛ける。
「会ったばかりのクラスの皆のために、身を削ってそこまで出来る人――なかなかいない。
倉掛さんの頑張り、きっと皆に届くから」
「そ、そうかな……」
見えなくても分かる。倉掛さん、少し笑ってくれたな。
「それに……倉掛さんが無理しすぎて体調崩して、新オリを欠席になったら……つまらないよ」
「へへ、照れるね……っ。
でも……ありがとう」
「倉掛さんがいないと、ね?」
「うん」
倉掛さんは、寝転がったまま、かぶさる俺の背中に手を回す。
そしてキュッと、俺のシャツを握った。
「……泣いていいよ。誰もいないし、俺も……何も見えないし、聞こえないから」
「ありがとう……トキくん……っ」
「……頑張ったね」
俺の胸の中にいる倉掛さんが、静かに泣く。
彼女の体温を感じながら、俺は少しだけ、抱きしめる力を強めた。
「(こんなに小さいんだな……)」
大橋に勝手に決められた学級委員。
たったそれだけの事なのに、皆に喜んでもらおうと、たった一人で頑張っている。
倉掛さんの健気さが、俺の胸を大きく打った。