寡黙なトキくんの甘い溺愛
今にも泣きそうな私の目を見て、しずかちゃんは笑った。
「せっかくのお化粧が台無しだぞ。ほら、彼氏に拭いてもらっておいで」と、私をトキくんの方へとポンっと押した。
ありがとう――何度言っても、きっと伝わらない。今の私は、しずかちゃんや大橋くん、そしてトキくん。たくさんの人の愛で生まれたようなものだから。
「みんな、大好き……」
半分泣きながら呟くと、トキくんと握っている手が少し窮屈になった。見ると、トキくんが少し不満そうな目で私を見ている。
「大好きなのは、みんな?」
「え……」
「俺は、砂那が一番に大事で大好き」
「と、トキくん……」
ちょうど下駄箱に着いた時にそんなことを言われるものだから、他の人にも皆に聞こえてしまう。そして「大ニュース!!」と一気に校内が騒がしくなった。