【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情


確かに、ルビーのチート能力を目の前で発動されてしまえば全ての努力が馬鹿馬鹿しくなってしまう。
マルクルスはベルジェの近衛騎士によって、ずるずると引き摺られながら何処かに連れて行かれてしまった。


「……今日は失礼する」


そう言って華麗に去って行ったベルジェの後ろ姿を目で追っていた。
隣から「御免なさい、ジュリエット……」小さく弱々しい声が聞こえて顔を上げると、そこには初めて見る泣きそうなルビーの姿があった。
思わず「大丈夫」と言って、抱き締めるとルビーの腕の力が強まった。

その後は、これまた信じられないくらいのスピードでマルクルスとの婚約は解消される事となった。
恐らくベルジェの存在が大きかったのとルビーに直接嫌われた為か、ジュリエットの婚約者でいる意味がなくなったのだろう。

そして噂は広がり、社交界にはマルクルスを非難する声が沢山上がった。
令嬢達からは勿論、姑息な手を使いルビーに近づいたこともあり、影から令息達からの攻撃も凄まじいものだったと聞いた。

(フフッ、ざまぁ……)

当然といえば当然だろう。
庭にある斧は、そのまま壁に立て掛けられて静かにしているところを見てホッと息を吐き出した。

明らかに小説の流れになった事に安堵したのだった。
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