「仕事に行きたくない」と婚約者が言うので
「ねえねえ、ヘラルダも隣に来て」

 ねえねえ、と言われたら、はいはいと答える。マンフレットの隣に座るヘラルダ。するとマンフレットがヘラルダの方に倒れてきて、そのまま彼女の大腿上に頭を預けた。

「まぁ、食べてすぐに横になると、牛になるそうですよ?」

「何、それ?」

「東の国の言い伝えだそうです。セース先生は博識ですから、他の国の事についても、教えてくださるのです」

「そう、僕はセースのウンチクは鬱陶しいから嫌い」

「セース先生も同じようなことをおっしゃっておりましたよ。マンフレット様は興味の無いことには全く耳を傾けてくださらない、と」
 そこでヘラルダはマンフレットの髪の毛を優しく梳く。

「ヘラルダにそうされると、気持ちいい。もっと」

「はい」

 指に纏わり付く彼の金色の髪は柔らかい。赤か茶色か、わからないようなヘラルダの髪とは大違い。彼のこの髪が羨ましいとさえ思ってしまう。
 しばらく彼の髪を手で撫でていたら、すぅすぅと寝息が聞こえてきた。


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