お嬢様、今宵は私の腕の中で。
*
「お嬢様。そろそろ入浴のお時間ですが」
入浴セットを持っている九重が扉のそばで言った。
「1週間、個室のお風呂で窮屈でしたでしょう。大浴場でゆっくりしてきてください。私はお部屋で待っておりますので」
「待つ、って」
「申し上げましたでしょう?続きは今夜、と」
「……っ!」
やっぱり本気なんだ……。
何が何だかよく分からないけど、とにかく昼間の続きをするらしい。
わたし、なにされちゃうの……?
「お嬢様」
おどおどするわたしを九重は訝しげに見つめて、ゆっくりと近づいてきた。
「ちょっ……こないでっ」
「何故ですか。お嬢様、いったいどうされたのですか」
「な、なんでもないっ。お風呂入るから、それ貸して!」
九重の手から入浴セットをひったくるようにして、部屋を飛び出す。
「お嬢様!」
後ろから九重の声が聞こえてくるけど、そんなのお構いなしだ。
ばくばくとうるさい鼓動。
ほてった身体と熱い頬。
全部全部お風呂のせいにしてしまいたくて、夢中で大浴場に駆け込んだ。