お嬢様、今宵は私の腕の中で。

どういう体幹してるの、この人。


きっと毎日筋トレをして身体を鍛えているのだろう。


そうでなければこんなふうに座ったまま寝ることなんてできない。


少なくともわたしは無理だ。


きっと身体の節々が痛くなってしまうし、第一、途中で椅子から落ちて目が覚めてしまうだろう。



「ん……お嬢、様?」



じっと九重の顔を見つめていると、伏せられていた瞼がゆっくりと上がり、澄んだ青色の瞳が現れた。



「おはよう、九重」

「もう、朝ですか」



太陽の光を受けて眩しそうに目を細めた九重は、またゆっくりと目を閉じた。



「ちょ、九重?」



軽く肩を揺らしてみるも、九重は目を閉じたまま動かない。



「九重……もしかしてだけど。朝、弱い?」



うーん、と唸る九重。


これじゃまるで、二度寝したがるお寝坊さんだよ。

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