お嬢様、今宵は私の腕の中で。
*
「お父様……お母様」
おそるおそる部屋に入ったお姉ちゃんの姿を認めて、お父様とお母様は揃って目を丸くした。
「……ひまりちゃん、なの?」
すぐに声を上げたのはお母様。
静かに首肯したお姉ちゃんのもとへ駆け寄って、その頬を静かに手でなぞる。
「帰って、来てくれたの……?」
お母様の瞳には涙が浮かんで、今にもこぼれ落ちそうだった。
「お久しぶりです。お母様」
お姉ちゃんは硬い表情のまま、お母様を見つめ返した。
「ひまり……お前」
後ろからお父様の声が聞こえてきて、びくりと肩が震える。
お姉ちゃんも同じらしく、その顔をさらにこわばらせた。