闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「櫂人先輩?」

「……」


 どうしたのかと呼びかけたけれど、櫂人先輩は無言で進んで行く。

 その様子に怒りのようなものを感じて、ちょっと不安になった。


 無言のまま連れて来られた場所は茜渚街の奥まった辺り。

 繁華街というより歓楽街に近い。

 専門店などは無くなり、明らかな夜の店が多くなっている。

 でも、注意喚起のためかこの辺りも営業している店は少ない。

 普段なら眩しいほどに光ると思われるネオンもつけられてなくて、本来なら賑わう街が夜の静けさに包まれていた。


「こっちだ」


 そう言って向かったのは大通りから少し外れた小路の方。

 いっそう暗くなったそこは少し怖かったけれど、櫂人先輩と一緒なら平気だと思えた。
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