初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜

そんな完璧なビジュアルと若くして神々しいキャリアを持っている専務を狙っている女性は社内外に数多(あまた)といて、露骨に態度に出してくる取引先の女社長なんかには本当に困ってしまったものだった。

なんてったって、この方の秘書になったわたしでさえも変な期待と邪念を消し去るのに、まるまる2ヶ月かかったんだからっ。

そんな完璧男が脇見もせず、真っ直ぐにわたしだけをその黒曜石(こくようせき)のような瞳に映しながら目の前まできた。

「やぁ。早めに着いたと思ったが…、待たせてしまったか?」

「いえ。わたし達もちょうど今カフェから出て来たばかりですよ」

「そうか。…で、そちらの方々は君のご友人かな?」

「え?あ、そう…です…」

専務の視線が横に逸れたのとほぼ同時にわたしも横にいる友人たちを見た。

そこには例によって頬を紅く染め、両眼からハートが飛び出し、うっとりと吐息をもらしているふたりがいた。

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