【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 一息で一気に告げた言葉に追い払おうとしている感じもしたけれど、その表情は天使張りににこやかで判断し辛い。


「いえいえ、じゃあ俺はこれで。昼メシも買って食わなきゃ無いんで」

 そう言えば家で昼食を食べてから歯医者に行くと言っていた。
 買って食べるという事は家に帰る時間までは無いって事だろう。

「あ、忍野君!」

 あまり引き止めるのは悪いけれど、お礼は言わないと。


「ん? 何?」
「送ってくれてありがとう、時間取らせてごめんね」

 軽く振り返った忍野君にお礼と謝罪を言うと、彼は「いいよ、じゃあなー」と片腕を上げて去って行った。


 去って行く忍野君を見送っているとスマホの着信音が聞こえてきた。
 バイブの振動も伝わってくる。私だ。

 鞄の中から取り出して画面を見ると、そこには愛良の文字。

 私は急いで操作しその電話に出た。


「もしもし愛良⁉ 大丈夫なの?」
 電話がつながると同時に安否確認の言葉を発する。
 でもそれに返って来たのは深いため息だった。

『はぁー……。大丈夫? はこっちのセリフだよ!』
 怒りを滲ませた声音に思わずビクリと震える。


 あれ?
 愛良が怒る様な事、私何かしたっけ?


「え? 私何かした?」
 火に油を注ぐ質問だと分かってはいたけれど、分からないことは聞かなきゃ分からない。

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