【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 浪岡君の言葉に「うっ」と反応しそうになったけれど、表に出さない様にポーカーフェイスを心掛けた。

 それに答える前に俊君も続けて質問してきたのでバレてはいないと思う。


「それにその人……確か聖良先輩の前の学校の人ですよね?……どうして……」

 忍野君に視線をやりながら少し戸惑い気味に聞いて来る。

 言葉は最後まで口にしなかったけれど言いたいことは分かった。


 どうして忍野君がここにいるのか。

 あと、俊君達は吸血鬼の気配とかも分かるらしいから、どうして吸血鬼になっているのかってことだろう。


「忍野君は私を助けに来てくれたの」

 私が分かることはそれだけだ。

 それだけだけど、少なくとも敵じゃないってことだけは伝えておきたい。


 と言ってもその言葉だけじゃあ安心できないんだろう。

 皆は忍野君の説明を聞こうと彼に視線を集中させた。


 皆の視線を集めて「うっ」と戸惑いを見せる忍野君だったけれど、説明しないわけにもいかないって分かってるんだろう。

 渋々と今話せる範囲のことを語った。


「俺は人間に成りすます(すべ)を手に入れ、人という“()”に“(しの)”ぶ吸血鬼の一族だ」

 岸にも語った言葉を口にして、続ける。


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