【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「最近学校の皆――いや、この街全体の雰囲気がおかしくなってたんだ。表面上は普段通りなのに、誰かに操られている傀儡(かいらい)の街みたいになってて……」

 そこで顔を上げて私を見た。

「吸血鬼が関係してるってことは分かったけど、俺にはどうすることも出来なくて……。そんな時に香月が姉妹で戻って来てるのを見た」


 あの雑貨屋さんでのことかな?

 そう言えばあの時かなり慌てていたね。


「“花嫁”が戻って来てるって知って、今のこの街はそのために作られたんだろうって思った。野に忍ぶ俺達は本当なら知らないふりをして隠れてやり過ごすべきなんだけど……」

 そこで言葉を止める。

 私を見ながら強い躊躇いを見せた。


「忍野君?」

「……でも、香月が……本物の“花嫁”である妹と同程度の“花嫁”になってしまったのは、多分俺のせいだから……」

「え?」

 またうつ向いてしまった忍野君の言葉が理解出来ない。


 私が“花嫁”になってしまったのは忍野君のせい?

 私、忍野君に何かされたことあったっけ?


「どうしてお前のせいなんだ?」

 そう聞いてくれたのは津島先輩だ。

 でも、忍野君はうつ向いたままさらに顔を逸らす。


「それは……ちょっと、家族とも相談が必要になる話だから……」

 今は話せない、と消え入るような声で言った。
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