【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

愛良の選択

 寮の自室に帰ってくると疲れがどっと出てきてベッドにうつぶせに突っ伏す。

 ただ遊んで帰ってくるだけのはずだったのに、とんだお別れ会になってしまった。


 ……有香達、大丈夫かな?


 別れる最後まで反応を示してくれなかった友人達。

 田神先生は入れられた血が薄まれば元に戻るから大丈夫だ、とは言っていたけれど……。


 あの虚空(こくう)を見つめるだけの状態を見ると、本当に大丈夫なのかと不安になる。

 定期的に見舞いに行きたいけれど、多分しちゃいけないんだよね。

 ハッキリとは言われなかったけれど、雰囲気がもう有香達に会わない方が良いと物語ってた。


 その理由も、なんとなく分かる。

 また頻繁に会ったりしたら、今後も今日みたいに利用されてしまうからだろう。

 今日みたいに人質扱いされるならまだいい方。
 最悪はその上で殺される可能性もあるってことだ。


 愛良の友達は、愛良がはじめ抵抗したせいで顔に傷をつけられたんだとか……。

 痕が残るほど深い傷ではなかったけれど、シェリーは人を傷つけることにためらいなんて欠片もなかったと、帰りの車の中で愛良が教えてくれた。


 私達を狙ってくるような相手はそういう人達なんだと、理解しなきゃならないと思った。


 しかも、そのシェリーは捕まっていない。

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