【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

最後のデートと再会

「妹の方が愛嬌あって可愛いよな」

 そう言われたのは小学生の頃だったか。

 でもいつもそうだった。

 愛良に限らず、選ばれるのはいつも私じゃない別の誰か。


 前は単純に私より他の誰かのほうが可愛いからだと思っていたけれど、今考えると性格が理由だったってことだろう。

 せめて見た目が性格と合っていればまた違ったのかも知れないけれど、見た目も性格もそう簡単には変えられない。

 だからどっちにしろ仕方ないことだったんだ。


 それでも、私じゃない誰かを選ばれるたび、私の心は少しへこんだ。

 傷というほど深いものじゃない。

 へこむ程度の、大したことのないもの。


 ただ、何度もへこまされてしまったからそのへこみが戻れなくなっただけ。

 ただ、それだけ……。


 それだけ、なのに!

『劣化版とか言うな。俺の女だ』
 シェリーが、私を愛良の劣化版だと言ったときに返された言葉。

『それが良いんじゃねぇか』
 勝気な態度で“じゃじゃ馬”と評されたときに返された言葉。

 そんな言葉たちと、彼から与えられる執着が、戻らなくなったへこみを埋めていく。


 違う!
 あんたじゃない!

 あんたじゃないはずなんだ!


 思い返しても酷いことしかされていないと思う。

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