【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 なのにどうしてあいつはこんなにも私の中に入り込んできてるの?


 会わなくちゃならない。
 会って、ハッキリさせなきゃならない。


 私の意思なんて関係なく、全てを奪おうとするあいつなんかに私はあげない。


 きっと、会って優しさのかけらも無いあいつを見れば、田神さんの方が良いと思えるはず。

 そうして田神さんの思いに応えられれば、きっとあいつの存在なんか私の中から消えてなくなるはず。



 だから、会わないと。

 会わないとならない。


 何度もした決意を繰り返すと、記憶の中の岸がにやけ顔で目の前に現れる。

 私はそんな岸をビシッと指差し宣言した。


「首を洗って待ってなさい! その顔ぶん殴って、あんたを私の中から追い出してやるんだから!」

 すると、岸の表情が変わる。

 笑顔なのは変わりない。
 けれど、獲物を狙うハイエナのような目をしていたのに突然力が抜けたように物悲しさを含んだ眼差しになる。

 悲しそうな、寂しそうな笑みを浮かべた岸は――。


『聖良……』

 と、私を求める言葉を口にした。


「――っは⁉」

 心臓を掴まれたような感覚がして、私は目覚める。

 ああ、そうだ。
 あれは夢だ。

 この一週間、毎晩のように見る夢。


 あいつに会って、ぶん殴って。
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