【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 津島先輩と石井君は私が岸の“唯一”だと知ってからは結構普通に話してくれるんだけれど……。


 田神先生は授業以外では顔を合わせることが無くなったし、俊君と浪岡君に関しては目が合ってもそらされ無視されてしまう。

 忍野君だけは何か言いたそうに見てくるけれど、結局話はしないで過ごす。


 あとは鬼塚先輩や弓月先輩達H生。

 はじめはデートでちゃんと守れなかったことを謝られたけれど、私が岸を選んだという噂を聞いたからなのか避けられるようになった。


 あの日鬼塚先輩に掴みかかっていた人なんかは、あからさまに裏切者でも見るような目で睨んでくる。

 鬼塚先輩と弓月先輩はそれまでの交流もあるからそこまであからさまな態度はしてこないけれど……。

 それでも良く思っていないんだろうなってのは伝わってきた。



 そんな居心地の悪い学園生活を続けていたある日。

 私は珍しく鬼塚先輩に呼び出された。


 その日は嘉輪が委員会で呼び出されていて、正輝君も同じ委員会だからいない日だった。

 だから護衛には石井君がついていてくれたんだけれど……。

「石井はここで待っててくれるか?」

 そう言ったのは鬼塚先輩が呼んでいると言って畳教室まで連れてきてくれたH生の男子生徒だ。

 畳教室に入るドアの前で言われて石井君は少し眉を寄せる。


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