【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

月のない夜に

 ポカポカになった私は不満顔でシャワールームから出た。

 キスマーク、つけられても良いなんて思うんじゃなかったと今物凄く後悔している。


 だって、この沢山のキスマークがあるせいで地下の温泉に入れないんだもの!


 永人は見せつければ良いなんて言うけれど、一つならともかくこれほどあるのは……。

 見えない所ならって言って、胸元だけじゃなく肩にまであるし……。


 いくつあるんだろうって数えようとしてやめた。

 以前沢山つけられたときより多い気がしたから。


 今度からは絶対に一つだけにしてもらわなきゃ。

 いざそのときになったら止められるかは自信がないけれど、私はそう決意してランドリー室からも出た。

「あ……」

「あ、聖良さん」

 すると温泉帰りだろうか。
 エレベーターから丁度弓月先輩が降りて来たところに鉢合わせする。


「こんばんは、弓月先輩」

「ええ、こんばんは」

 挨拶を返してくれた弓月先輩は笑顔だけれど、どことなく遠慮している様に見える。


 私がH生に襲われた事件のときから弓月先輩はずっとこんな感じ。

 会っても申し訳なさそうに挨拶を交わしては、「じゃあ」とそのまま別れてしまう。


 でも、今日は珍しく話しかけられた。

「……下で愛良さん達と会ったわ。聖良さんは珍しくシャワーなのね?」

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