【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 まさかとは思うけれど、今日会う吸血鬼達はみんな彼女のように始祖様扱いしてくるんだろうか?

 その疑問が当たっていそうな気がして、パーティーが始まる前からちょっとうんざりしてきた。


 部屋で一人になれて、やっと息をつく。

 荷物もそのままに、ベッドにボスンと横になった。


 そうすると、今朝方見た夢を思い出す。


 今朝見た夢では、あの欠けた球が溶けきったのが分かった。

 そうして、姿は見えなかったけれど女の子の声が聞こえたんだ。


『その力は、あなたの思いのままに……』


 って。


 あの欠けた球はきっと始祖の力そのもの。

 欠けていたのは、私が本来は“花嫁”ではないから。

 本当の“花嫁”じゃないから、完全な球体の始祖の力は与えられなかった。

 ……多分、そういうこと。


 あの愛良に似ていると思った少女は、きっと最初の“花嫁”だ。

 吸血鬼になったからこそ分かる血脈の繋がり。


 吸血鬼の両親から生まれたにもかかわらず人として生を受けたという最初の“花嫁”。

 彼女はそのまま人間と結婚し、子をなした。

 そうして人間の血脈の中に“花嫁”の血筋は広がって行った。


 今では広がり過ぎて世界中にその血筋が存在するくらい。

 私達も、その“花嫁”の血筋だった。

< 705 / 741 >

この作品をシェア

pagetop