【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「参ったな……思ってた以上に綺麗で、驚いちまったんだよ」

「え?」

「ちょっと、ガラにもなく照れるっつーか……ドキドキしてるんだよ……」

「え……」


 永人が、照れてる⁉


 フォーマルな格好をということで、永人もスーツを着こなして前髪を上げている。

 そうして丸見えになっている耳が少し赤い気がするのは、気のせいじゃないってことなのか……。


「え、えっと……」

 照れている永人に、私までドキドキしてくる。

 いつも強引に迫ってくる永人でもこういう顔するんだ……。


 永人の新しい一面を知れて、嬉しくも照れ臭い気分になった。


***

 照れ臭くてお互いにちょっとぎこちなくなってしまったけれど、いざパーティーが始まるとなると気を引き締めざるを得なくなる。

 海外からも来ているという吸血鬼の有力者達。

 その中には、今まで愛良を狙っていた月原家の当主もいる。


 見れば、愛良の表情も強張ってるみたいだった。

 私がしっかりしなきゃ。

 そう意を決していると、エスコートのため隣で一緒に待機している永人が真面目な顔で話し出した。


「……聖良、とにかく何か起こっても夜になるまでは引き延ばせ」

「え?」

「今夜は、新月だからなぁ……」

「あ、そっか」

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